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海外で行うボランティア活動の意義とは?ボランティア経験のある就活中の大学生も必見。

昨年10月15日に公開され、話題を呼んだ映画「何者」。朝井リョウさんが著した就活が舞台の同名小説が原作となっています。この映画の中で、二階堂ふみさんが演じた「理香」。彼女は海外ボランティアの経験を武器に就活に挑みますが、内定をなかなかもらえず苦戦します。

実際の就活の場面でも、このような話題を切り札に、ある種の「武勇伝」を話す大学生が多くいます。海外ボランティア経験というのは、アピールしやすい話題であるがゆえに、在学中にとりあえずボランティアに参加しておこうという考えの人も多いようですね。

では、海外でボランティア活動を行うことの意義とは何か?どんな点に注意しながら行えば、自分にとっても成長につながるのか?実際に発展途上国でのボランティアに参加した立場から、思うこと・考えたことをつらつらと書きまとめていこうと思います。

「海外で」行うボランティアの意義はない?

上のような意見を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。「アフリカの恵まれない子供達に食事を届けたとしても、その子供達が大人になるまで生きて、また子供を何人も産み、こうして貧困や飢餓は連鎖していく。」そんな事実を述べる人もいます。「国内でも自分の身近な所でも、ボランティアや寄付はできるのだから、わざわざ海外まで行ってする意味はあるのか?」と尋ねてくる人もいます。

確かに、上で述べられた意見は全て事実であり、真っ当な意見だと思います。

わたしが、海外ボランティアに興味を持ったのは、高校生の頃でした。京都大学の教授をされながら、国境なき医師団に参加されている方(すみません、お名前忘れました。)が高校に講演に来てくださったのです。その時は、シエラレオネでの活動について話をしてくださいました。世界で最も寿命の低い国と言われているシエラレオネ。その国で起きている悲惨な現状とご自身の活動についてのお話をお聞きしました。

その後、ある尊敬する知人と話した時にこう言われました。「一人を救うのと、十人を救うのと、百人を救うのに、何の違いもないんだ。」

この意見に賛同する人は、もしかすると少数派かもしれません。災害などが生じ、百人が生き埋めになっている場所と一人が生き埋めになっている場所があれば、百人の方に部隊を遣わすという選択肢が取られる場合があります。もちろんこれは極論ですが、実際大抵の人は「仕方ない」と考えて気持ちの折り合いをつけていると思います。

しかし、わたしは前述の知人の意見に納得しました。「確かに。救える命の数が問題ではないんだ。」と。

この場合の「一人の命を救う〜」という考えは、こうも捉えることができます。例えば、自分の家族・クラスメート・職場の同僚・友達・親戚・近所の人など身近なところで一人の人の命を救う(または、その人が生きやすいように手助けする)ことと、海外で災害救助などのボランティアに参加し百人の命を救うこととは、天秤にかけられるものではないという捉え方です。

このようにボランティアの定義を広げて考えると、日本国内で場所を変えなくても、ボランティアを行うことは可能だと思います。

しかし、そう考えていたにも関わらず、結局わたしは海外でのボランティアに参加しました。上の考えが間違っていると感じたからではありません。今でも、その考えは気に入っています。では、なぜなのか。

結局のところ、海外に行ってボランティアを行うことの動機は自己満足でしかないと、わたしは思います。日本でも行えることを、わざわざ海外に行って行うのですから、何かしら個人的な満足感や充実感を求めて、人はボランティアに参加するのです。

それは、例えば

  • 誰かに必要とされたい。
  • 自分のスキルアップに繋げたい。
  • 就活に役立てたい。
  • とにかく海外に行ってみたい。
  • 視野を広げたい。
  • その国が好きでその国に住みたい。
  • ゆくゆくはその国でビジネスをしたい。
  • その国の言語を習得したい。

などなど。

もちろん、「人の役に立ちたい。」という考えの人もいると思います。ですが、そういう考えの人もとどのところ人の役に立つことに自身の存在意義を見出しているパターンであれば、結局は海外でボランティアを行うことの動機には、少なからず自己満足の気持ちが含まれていることになります。

わたしの場合は、「その国が好きでたまらなかった。」というのと、「人の役に立つことに自分の存在意義を見出していた。」という気持ちが強かったように思います。

結果まで自己満足にならないためには?

では、動機の部分だけを考えると一種の自己満足の気持ちが含まれていたとしても、結果まで自己満足で終わらせないためにはどうすればよいでしょうか?

つまり、わたしたちの「あ〜、いいことした。海外にも来れたし。」という感情で終わるのではなく、現地の人も「あ〜、いいことをしてもらった。」と感じるためには、どうすればよいでしょうか?

その国やその人を変えようとしない。

これも、尊敬する知人から言われた言葉です。

発展途上国には貧困や飢餓・道徳観念の低下による様々な病気など、数え切れない問題があります。もちろん、ボランティアに参加するのですから、こちらとしては何かの問題に気がついており、それをどうにか良くしたいという気持ちでいます。しかし、それらの問題をこちらが「変えよう」とするのではなく、相手に「変わりたい・変えたい」という願いを起こさせることこそ、ボランティア活動の真の目的なのです。

なぜなら、急に自分の目の前に現れた人に何かの問題点を指摘されて、変わろうとする人は少ないからです。ボランティアにおいて、その国やその人を変えようと意気込むことはご法度なのです。実際、自分は赤の他人の人生やその国自体を変えることができると考える人がいるなら、その人の考えは「驕り」だと思います。

例えば、ある発展途上国に住む10歳の少女は朝暗いうちから起きて、歩いて1時間の場所まで水汲みに出かけます。そのあとも家族の食事の準備や、家の家畜・農作物の世話を手伝います。男手は外国に出稼ぎに出ているため、家庭内のことは母・祖母・年老いた曽祖父・曽祖母で行っています。小さい弟や妹たちが何人もいます。そんな毎日ですから、教育もろくに受けられていません。

そのような実情を見て、わたしたちは「教育を受けさせなければならない。」と思います。その地域に寺子屋を作り、仮の授業をスタートさせ、一週間お試しで学校に通わせることにします。その少女は目を輝かせて、教育を受ける楽しさを知ります。

ここまで読むと、ボランティアは成功に終わったように聞こえます。ですが、いざ海外から来たボランティアや指導員がその地から去ったなら、どうなるか考えたことがありますか?

その少女が、根底では「家族の手前、自分だけ教育を受けるわけにはいかない。」と感じていたとしたら、どうでしょうか。家族の経済状況を知っているばかりに、家事や家畜の世話を投げ出して学校に行く決定はできないと感じるかもしれません。その少女の家族の気持ちも考えなければなりません。海外から来てくれた「なにやらいいこと」をしている外国人に面と向かっては言えなかったものの「学校に行くより、うちの手伝いをしてほしい。」と思っているなら、どうでしょうか。

海外から来たボランティアがその地を去ったあと、現実は元どおりになります。なにも変化は起こりません。

「教育を受けさせなければならない。」これは、確かに事実です。と同時に、この見方は先進国から発展途上国を見た考え方です。その国にはその国の実情があり、様々な問題が複雑に絡み合っている、ということを忘れてはなりません。

先ほどの例えで考えるなら、

  • その地域に学校がないこと。

以外にも、

  • 男手が出稼ぎに出ていること。
  • 男尊女卑的な考え方。(女の子には教育を受けさせても意味がないなど)

などの問題があります。(実際には、もっと複雑である場合が多くあります。)このような問題ゆえに教育を受けさせない(受けない)道を、家族もその少女も選んでいるのです。それらを理解した上で、「でも、それでも、教育を受けたい。」という願いを持ってもらわなければなりません。理想をいうならば、「可能であれば、教育を受けたい。」程度の気持ちではなく、「不可能であっても、それでも教育を受けたい。」となるほど強いものでなければなりません。

その過程では、もちろん先ほどの例えに記したように「体験授業」なども組み込んでいかなければなりませんが、まず訪れた先の地やそこにいる人たちの状況を理解することから始めなければなりません。そこに住む人たちがどんな生き方をし、どんな人生を送ってきたか。そのことについて当人自身がどう感じているかを机上の知識ではなく、実際に知る必要があります。相手の人権を認め、その人個人に目を向けなければなりません。この段階をクリアするには、かなりの時間が必要になります。

しかし、その後、相手が自分の意思で「貧困から抜け出したい。」「教育を受けたい。」などの願いを持つなら、これほど大きな原動力となるものはありません。

その後、できれば「もの・お金をあげる」という援助ではなく、実際的な貧困から抜け出す方法・教育を受ける方法を探し、提案するのです。と一言で言っても、この段階はとても難しい段階でもあります。その国の実情や、個人によって異なる貧困や教育の程度に応じて、その人個人が行うことのできる実際的な方法を探さなければなりませんから。

助ける側と助けられる側にならないようにする。

上記のポイントの最後の部分でも触れましたが、ボランティアは、できれば「何かのものをあげる」という援助ではない方が望ましいのです。さもなくば、助ける側はずっと与え、与え、与え続けますが、助けられる側はずっと受け、受け、受け続けるという不思議な構図ができあがってしまうのです。

多くの人がお気づきの通り、社会の中で人は受けたり与えたりすることを繰り返しながら、喜びを感じ、自分の存在意義をはかり、自尊心を抱き、成長していきます。「ずっと」受け続けるということは、実際には人生において不可能なことでありながら、そのような経験をしばらくの間積んでしまうと、物事の捉え方や価値観に悪い影響を与えかねないのです。

例えば、わたしのいた国・ネパールには、「自分は貧しい。仕事がない。お金がない。」と嘆く人が大勢います。しかし、その言葉の裏には、「外国人(富んでいる人)はお金をくれる。ボランティアはただでものをくれる。」という考えが少なからず見え隠れしているのです。

中には、「貧困から抜け出したい。」と述べる人ももちろんいます。ですが、大抵の場合、そういう人は行動しないのです。その人の述べた「貧困から抜け出したい。」とは、単に言葉だけで、「自分が努力をするのではなく、ただで貰えるものがあるなら欲しい。」という考えの言い換えなのです。

ですから、このような場合、非情に思えるかもしれませんが、「何かのものやお金をあげたところで当人の問題はなくならない。」ということを、わたしたちが忘れないようにしなければなりません。

わたしも何度となく情にほだされ、ものやお金をあげたい気持ちにかられました。実際に渡してしまったこともあり、失敗したことがあります。特に、上のポイントで記したように、その人たちの状況をある程度理解できるようになった後に、必ずと言っていいほど「かわいそうだ。」という気持ちが強くなる時期があります。実情を一層深く知ってしまったがゆえに、情が湧くのです。

しかし、その時に何かのものやお金を渡してしまうと、それまで積み上げてきた信頼関係が一気に崩れてしまいます。一瞬で、相手の自分に対する見方が変わってしまうのです。(邪心からではないと今でも信じていますが)何度も「今回だけ。」と言いながら、お金をせびってくるようになるのです。

それでも、そういう人たちの考えは間違っていたとしても、性根が悪いわけではありません。その人たちは、受け続けるという経験ばかりを積んできたために、歪んだ価値観・人生観を持ってしまっているのです。

結局のところ、助ける側・助けられる側、与える側・受ける側という構図のままでいるなら、それは依存心のみを強め、自分の力で立っていくことを阻んでしまいかねません。いつか依存相手の海外ボランティアや指導員が去ったあと、彼らは自分たちで人生を操ることができなくなります。

自分の力でどこまでのことが成し遂げられるのかに気付かない人は、いつまでたっても貧困や教育のない状態から抜け出すことができないのです。それは、ボランティアとして助けを与えるわたしたちの立場からしても、不本意で残念なことです。

百年後のために人を教えよ。

この言葉も、尊敬する知人から教えてもらいました。「一年後のために種を蒔き、十年後のために木を植え、百年後のために人を教えよ。」ということわざが中国にあるそうです。

「お腹を空かせている人がいる。→だから、食べ物を与える。」これは、海外ボランティアでよく見られる図式です。しかし、そこ止まりになっていると、いつまでたっても人は貧困や飢餓から抜け出せません。この記事の冒頭で述べたように、食べ物を与えることによって、生き長らえ、子供を産み、飢餓が連鎖していくような状況を作りかねません。

「学校がない。→学校を作る。」「教科書がない。→教科書を渡す。」なども同様です。そこ止まりで終わってしまえば、それは残念な結果に繋がるかもしれないのです。

しかし、百年後を思いつつ人を教えていく、つまり人の意識を変えていくなら、物事は変わっていきます。貧しい人が、教育を受け、勤勉に働くことの大切さを学び、生きる方法の探し方・見つけ方・考え方、諦めないことなどを学べば、未来はきっと明るくなるはずです。食べ物を与える時のように、急にお腹がいっぱいになったり、感情が急に変わったりすることはないとしても、長期的に見るなら人を教えることが一番良い結果を生むのです。

もちろん、百年後を思いながら、目の前にいる人の今日を顧みず餓死するままにするというのは本末転倒だとも思います。しかし、いつでもバランスや比重をよく考えて、食べ物やお金を与え続けるままにならないようにすることが重要です。

自分のどんなスキルアップに繋がるか?

上記のポイントに注意を払いつつ真剣にボランティア活動に向き合っているなら、自分自身にとっても非常に重要なスキルを身につけることができます。

例えば、

  • 順応性
  • 適応力
  • 分析力
  • 相手を尊敬する態度
  • 潤滑油のような役割の大切さ
  • 問題に圧倒されない底力
  • 忍耐力
  • 問題を解決する力
  • 計画性

などです。このようなことは、企業内でも必ず役立つスキルです。そういった部分を前面に出しつつ、企業にとって役立つスキルをアピールすれば、就活でボランティア経験を話すことは有利に働くでしょう。

海外で行うボランティアの意義はあるのか?ーーーわたしの答えは「YES」です。

しかし、その意義はボランティアに参加する人が「何を」「どういう心持ちで」行うかで変わってくると思います。結果的に見ると、「意義のない」「意味のない」ボランティアになってしまうものも中にはあります。

ものやお金を渡すボランティアも、確かに必要です。しかし、それに全く傾倒してしまうなら、あるいは少しでもバランスを失ってしまうなら、そのボランティアは結果をもたらさないものになると思うのです。

では、ボランティアの意義は何か?ーーー難しい問いですが、現時点でのわたしの答えは、「海外ボランティアがいずれなくなるために必要。」といったところでしょうか。

冒頭で述べたように、身近な所で身近な人に対して親切であること、相手が生きやすいように助けてあげること、また出稼ぎではなく、自分の国で仕事をして税金を納め社会貢献をすること、自国の先生から教育を受けること、これらで社会が回っていくことが最も理想であると思います。つまり、ポジティブな面もネガティブな面も、現地のことは現地でまかなえるようになるということです。

助ける側として「お役御免」になることこそが理想なのです。当初「助けられる側」であった人が、「助ける側」に変わるためには、その人が自分の問題を解決する力を持つことだけでなく、上で書いたようなスキルを身につけることが必要です。そのために、「仕事を作る・与える」「ものを与える」「お金を与える」だけで終わらないことが大切です。できることなら、長期的に教育関係のボランティアに参加することが、一番有意義な結果に終わると感じています。

 

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