2016年にバングラデシュで日本人7人が犠牲になるテロが発生。事実から目を背けたくなるほど恐ろしさを感じる事件でした。世界中で発生するテロ事件を受けて、今の時期の海外旅行は行かないほうがいい、と判断する人も多いのでは。
そのテロの発生したバングラデシュと隣り合わせの国、ネパール。観光・移住どちらかにお越しをお考えの方にとって、治安はまず気になる点ですね。
今回はカトマンズの治安情報、また観光客やゲストハウスも多いタメル地区の治安をご紹介します。
ネパールの治安は悪い?旅行で行くのは大丈夫?
まずはMOFA(海外渡航安全情報)を確認。
まず第一に、外務省の海外渡航安全情報をチェックしましょう。
ネパールに限らず、海外旅行・移住の際にはまずこちらの情報をチェックするのが最善でしょう。そして、短期間の滞在であっても外務省に登録しておくとその国の安全情報を受け取ることができます。登録はこちら。3ヶ月以内の短期滞在者・旅行者はたびレジに、3ヶ月以上の長期滞在の方はORR.netに登録しましょう。
こうしておくと安全情報や注意情報を受け取ることができるので非常に便利です。バングラデシュでのテロもあったので、MOFAで過去の注意情報を見てみると、2016年5月30日にイスラム過激派組織によるラマダン期間中のテロを呼びかける声明の発出に伴う注意喚起情報がバングラデシュ在住者に通達されていたようです。ラマダン期間中、従来以上に安全に注意するように、となっています。
こういった情報を前もって受け取ることができるだけで、旅行者にとっては分かりにくい現地での危険から自分の安全を確保することがいくらか可能になります。
注意喚起の情報、実際どのように届くのか?はこちら。→ネパール大使館から旅行者・滞在者へのお知らせ
では、早速ネパールをチェックしましょう。
ネパール・カトマンズはレベル1「危険を避けるため、十分注意が必要」となっています。
ネパールで注意すべき7つのこと
さあ、では、一体何に注意が必要なのでしょうか。
ネパール在住者の意見からすると、以下の7つには注意が必要でしょう。
- バンダと呼ばれるストライキ(デモ)
- 不衛生ゆえの感染症や体調不良
- スリや泥棒などの軽犯罪
- (男性の場合)風俗店やドラッグの勧誘
- (女性の場合)マイクロバス内の痴漢を始めとする性犯罪
- 洪水や河川の氾濫(雨季)
- 交通事故
在留邦人にとってはかなりメジャーどころです。では、ひとつずつ対策とともに見ていきましょう。
❶ バンダと呼ばれるストライキ
ネパールではバンダと呼ばれるストライキが頻発します。ストライキを起こすのは、政治的な党派です。
ネパールの歴史を紐解くと、ネパール国内にはネパール共産党毛沢東派(マオイストと呼ばれる)やマデシ派(インド系少数民族)など多くの党派が争いを繰り返してきたことがわかります。
いろいろな考えの違う党派が自分たちの言い分を受け入れてもらおうとして、ストライキを起こすのです。
ただ単に「仕事をせずにお休み!」というものなら良いのですが、ネパールのストライキは過激!もはやデモ!
ストライキの内容は、バンダ(ネパール語で閉ざすの意)という名称通り、学校や商店は休み、道路も公共バスなどが全く走らなくなります。そして、主要道路では旗を持った党員たちが大声で何かを叫びながら行進。といった具合です。
ストライキが過熱すると、暴動に発展し、営業している商店や運行している公共バスなどに投石被害があったりします。
特に選挙前となると一層過激になり、バスや商店の爆破事件なども・・。
間一髪で爆破事件を免れた日本人の友人から話を聞くと、非常に怖い思いがしました。
対策
まず、上の外務省のたびレジやORR.netに登録しておくと、バンダの予定をメールで知らせてもらえます。
前日までに政府がバンダを起こす党派の要求を飲んだり、なんらかの折り合いが見られると、当日のバンダは解除されます。個人的な感想では、今までこのパターンが一番多いです。
解除の連絡がないまま当日を迎えた場合でも、その党派のバンダに参加できる人数などに左右されてか、バンダ実施宣言よりも小規模になることが多いです。道路は普通にマイクロバスや自家用車が走っていたりします。そういう場合は、普通に外出していました。バンダの日は、日本人お得意のスキル「空気を読む」を発揮するといいですよ。
基本の注意点は以下の通りです。
バンダの日は…
- 基本的に外出を控える。近所に野菜を買いに行く程度なら問題ないことが多いが、マイクロバスに乗っての外出は控えること。
- バイクを持っている人は運転を控える。路地なら大丈夫かもしれないが、大通りは特に注意。
- シンハ・ダルバール(議会)付近(行進が行われる)には行かない。
- 人が群れているところに興味本位で近づかない。
- マオイストが標的にしているような商店には近づかない。
基本的にネパール人個人単位でお付き合いすると、温厚な方がほとんどですが、集団になると群集心理が働き、過激になるというパターンがありますので、注意が必要です。
❷ 不衛生ゆえの感染症や体調不良
ネパールで気をつけるべき感染症はこちら。
- 腸チフス(街も家の中も、衛生状態が悪くなる雨季に要注意。)
- 狂犬病(野良犬のみならず、飼い犬にも注意が必要。狂犬病予防接種を打っているとは思うな!)
- 破傷風(手足に引っかき傷などがあるまま雨季で氾濫した道を歩く場合、注意。)
- A型肝炎、B型肝炎
上記に加えて、原因不明の体調不良に襲われることがあります。一ヶ月に一度、謎の高熱が一週間続く。とか、もう下痢とはお友達状態。などなど。
対策
まずは、予防接種を打つことです。
関連記事:【海外旅行準備】予防接種と注射の種類・スケジュール・値段を一挙公開!
上記の予防接種は日本でも現地ネパールでも打つことができますので、お好きな方をお選びください。
狂犬病の対策について詳しくはこちら。
関連記事:狂犬病の予防と対策|海外旅行時のリスクマネージメントは大切です。
狂犬病に関しては、予防接種を受けていたとしても、噛まれたあとには現地で曝後接種が必要ですので、覚えておきましょう。
あとは、衛生に気をつけることですね。水や野菜には気を付けましょう。ネパールの野菜はそれほど農薬を使ったりしてはいませんが、なにせ排気ガスなどにより空気が非常に悪いので、それを浴びながら成長した野菜には注意して何も損はないでしょう。
生野菜を食べたい時は、中国・広州生活でもオススメされていた「ホタテ」が便利です。
❸ スリやひったくり、泥棒などの軽犯罪
観光客はあまり利用する機会は少ないかもしれませんが、在住者の足となっているマイクロバス。ぎゅうぎゅうに詰めこまれて走るそのバスの中でスリ被害が多発しています。
財布や携帯など電子機器をすられることはもちろん、中にはグループでスリを行う集団も。数人のスリ集団にマイクロバスに押しやられ、財布を盗まれそうになり、必死に怒鳴りながら抵抗すると、バスが急停車。蹴り落とされる、という被害にあった友人も。きっとマイクロバスの運転手もグルでスリしようとしたのでは?と言っていましたが、運転手までグルとは…怖いですね。
また、自室で就寝中にiPadやパソコン、カメラを窓の外から伸ばした棒のようなもので盗まれた、という友人もいます。その地域では、同様の泥棒が多く発生したとか。
また、最近ではバイクによるひったくりや、商業施設での因縁をつけての金銭巻上げの被害が報告されています。
近日、カトマンズ市内タメル地区にて、
2人乗りバイクによるひったくり事件が多発しております。 金銭や貴重品を奪われるだけでなく、 犯行時に強引に鞄等を引っ張られるため負傷する可能性もあります 。同様の地域場所を通行の際は、貴重品の所持方法を確認し、 バイクの通行など周囲を警戒して被害に遭わないように注意してく ださい。
またカトマンズ市内の商業施設でも、ネパール人の若者グループに因縁をつけられて金銭を巻き上げられ るなどの恐喝行為が報告されています。 商業施設利用の際は多人数で行動し、 周囲に注意して被害に遭わないよう注意するとともに、 被害に遭った際は現地警察に連絡するようにしてください。 ー 大使館からの注意喚起メール
対策
まずは、財布や貴重品をポケットに入れない。カバンの中に入れましょう。男性の場合、財布とズボンをウォレットチェーンで繋げておくといいでしょう。
また常に周囲への警戒を怠らないことも大切です。
具体的なスリ対策方法については、こちらの記事にまとめています。
自宅でも、電子機器や貴重品を窓際には置かないようにしましょう。セキュリティ付きであれば、問題なしなんですが、なかなか難しいですよね。でも、可能なら安全意識の高い大家さんの家にお部屋を借りましょう。
❹ 風俗店やドラッグの勧誘
観光客の多いタメル地区。普通に歩いていると、「ハッパ、ハッパ」と声をかけられます。中国人や韓国人と見分けがつかないゆえに、中国語や韓国語でおそらくドラッグの意味の単語をかけられることもあります。
男性の場合、と書いたのですが、実はわたし独身時代に「ハッパ」と声をかけられたことはなかったんです。結婚し、夫婦でタメルを歩いていると、声のかけられること、かけられること。男性をターゲットにして声をかけているのかもしれません。
そして、風俗店の勧誘も。わたしはあまり現状を知らなかったのですが、ネパールのマッサージ屋さんは風俗店のようになっているようです。知人で、ネパール人女性の呼び込みを受けたという人もいたので、こういうお店のスタッフだったのかもしれませんね。
対策
基本は、声をかけられてもそっぽを向いていれば、問題ありません。全く聞こえなかったかのように、相手も全く見えていないように空気を相手にしているようなスタンスでいきましょう。
タメル地区では、欧米人の浮浪者もいます。ドラッグにはまって、自国に帰れなくなったのか…。その他、ネパール人のドラッグ常習者やホームレスもいますので、できるだけ目を合わさないように、変な恨みを買わないように、言いがかりをつけられないように行動しましょう。ドラッグで理性を失っている人は、予想もできない行動を取ることがありますので十分注意が必要です。
タメル地区はメイン通りから1本中の小道に入ると、とても暗く麻薬の売人などがウロウロしている場所もあります。暗くなってからは、用が無い限り怪しそうな小道は避けるようにしましょう。
❺ マイクロバス内の痴漢を始めとする性犯罪
わたしはネパールで二度経験があります。日本では、田舎出身で公共交通機関を使うこともほとんどなかったので、ネパールで人生初の経験でした。
一度は長距離路線(3時間ほど)をマイクロバスで移動している時です。もう一度は近所をマイクロバスで移動しているとき。どちらも、後ろの方の席に座っている時でした。ネパールのマイクロバスを経験された方ならわかることですが、乗車率200%のような車内。ただでさえ密着度が高いわけですから、すぐ手を伸ばせば触れることができます。
対策
マイラシート(女性専用席)に乗る。最近、どのマイクロバスも大抵前方一列が女性専用シートになっています。女性専用シートが空いていなければ、次のマイクロバスを待つ。または、少し詰めてもらって無理やり座る。前方に立ったまま乗る。などの方法を取ることができます。
後ろに座る時は、必ず誰かと一緒に。数人いれば、痴漢も大抵手を出してきません。
また、ネパールは特に男尊女卑の考え方が根強くあります。女性を蔑む考え方をもった男性は多くいますので、痴漢以外の性犯罪に巻き込まれる場合があります。馴れ馴れしく寄ってくる男性には十分注意しましょう。
❻ 洪水や河川の氾濫(雨季)
雨季はスコールが降ります。水害に強い街づくりがされていないため、雨季には毎年いろいろな地域で洪水が発生し、多くの人が命を落としています。
首都カトマンズも例外ではありません。市街地の道路は水で覆われ、どこが溝や用水路であるのか判別が難しくなります。
このような怖い場面に出くわすこともあるかもしれません。
雨季に冠水した道を歩いている少女が、用水路に落ち込み、流されてしまいます。
50メートルほど流されたところで運良く救出されますが、きっとたくさん汚水や雨水を飲んだでしょうから、この後発熱や下痢など体調を崩したんだろうなぁ。
対策
大雨の降る時間帯には出かけないようにしましょう。人もバイクも簡単に流されてしまいます。
用水路や川に欄干やガードレールはありませんので、どこに危険が潜んでいるかわかりません。人の流れや動きをよく見て、歩きましょう。
また、雨季に汚い水の中を歩くと、破傷風にかかる危険があります。予防接種を打っておきましょう。
❼ 交通事故
ネパールの運転マナーは類を見ないほど悪いです。
わたしの知り合いの在留邦人の中でも数人が交通事故の被害者になっています。知人の骨折や死亡事故も見聞きしています。
最近横断歩道が整備され始めましたが、横断歩道以外を渡った場合、罰金を取られることがあるのでご注意を。
関連記事:【ネパール旅行者必見】横断歩道を渡ろう!交通ルールで歩行者まで罰金対象!
対策
タクシーの乗り降りは安全なところで行うようにしましょう。必ず歩道側から降りましょう。
もしレンタバイクやレンタサイクルなどを利用する場合は、十分に安全運転を心がけましょう。カトマンズは渋滞がひどいです。時間に余裕を持って、あせらず運転しましょう。
トラックやバスなど大型車の周囲を走行する時は、十分に車間距離を取りましょう。
横断歩道や歩道橋が近くにある場合は、それを使いましょう。
またカトマンズ〜ポカラ間などの長距離バスが、ハイウェイから崖下に転落し死傷者が出るといった事故が頻繁に起きています。少しでも運転が危ないな!と感じたら勇気をもって降りましょう。
関連記事:ネパールの主要ハイウェイでバスが崖から転落、死者多数【大使館転載】
ぼったくりなどのトラブルに遭ったときの連絡先を知っておこう。
上記の注意すべき治安情報には含めていませんが、ネパールでは旅行客に対するぼったくりや値段釣り上げなどが非常に多く見られます。
例えば、
- お土産屋さんで明らかに過剰な値段を言われる。
- ゲストハウス内に置いておいたものが盗まれる。
- タクシー運転手に、はじめに合意した値段以上を後で請求される。
- 移動の予定であった日、運転手が都合で来られないと言い張る。
こんな場面です。
旅行中、お土産店員やタクシー運転手のネパール人に困ることをされたなら、ツーリストポリスに相談できることを覚えておきましょう。
ツーリストポリスとは、その名の通り、「観光警察」です。ツーリストポリスのいる国・いない国とあるみたいですが、ネパールにはツーリストポリスが備えられていますので、観光中に困ったことがあったならぜひ活用してください。
ツーリストポリスはカトマンズやポカラはもちろん、ルクラやナガルコットにもオフィスが備えられています。また電話でも相談できるので、ツーリストポリスの電話番号を控えておくといいですよ。
カトマンズのツーリストポリスの電話番号4247041、通常の業務を行う警察の電話番号は100です。
また、ぼったくりや値段の釣り上げ、約束の不履行などのトラブル真っ最中のときは、「ツーリストポリスを呼びますよ。」と言うといいです。
ネパール語では、「ツーリストポリスライ ボラウンチュ。」です。この一言は効果てきめんですので、ぜひ観光前にこの単語を覚えておいてくださいね。
テロの危険は?
テロの危険…安全だと思っていたところでテロが発生している今の世界情勢を鑑みると、こればっかりはわたしも何とも言えません。
ただ言えることは、先日のバングラデシュ・テロ事件後届いた大使館からのお知らせメールによると、ネパール国内でのISILの活動は確認されていないとのことです。ただ、上記したように過激派による車両の放火などが起きていますので、テロが発生する可能性は否定できないとのことでした。
ネパールはヒンドゥー教の国。人口から見ると、イスラム教徒はほとんどいません。でも、ネパールーインド間がパスポートなしで出入りできることなど考えると、過激なイスラム教徒やISIL関係者が入国するのは難しくないかもしれません。
不安を煽るつもりは決してないのですが、現状はこのような感じです。
追記:2019年2月22日最新情報
カトマンズ・ラリトプール市で爆弾テロが発生し、付
現在、特に大手携帯通信会社NCELL(エヌセル)が標的となっている模様です。
私たち外国人もよく利用している「NCELL」しばらくは近づかないなど注意が必要です。
女子旅するなら?
女性同士で気兼ねなくいろんな国を旅できるので、人気の女子旅。
ネパールは女子旅にはおすすめなんでしょうか?
ズバリ言うと、旅慣れていないならおすすめしない!です。
旅初心者にはなかなかハードルが高い国です。
インフラや交通の便も悪いですし、様々なことに自己解決力が求められます。
逆に旅慣れしてる人にはおすすめ。
「インド行きたい!」ってくらい気概を持ってる旅人女子なら、ネパールおすすめです!
インドより治安良いですし、女子一人歩きでも細心の注意を払っていれば比較的安心。
インド行く前に一度ネパールに来て予行演習すると良いかもしれません。
まとめ
最後になってしまいましたが、十分気をつけていれば、ネパールは滞在するのにすごく楽しい国です。そんな無法地帯みたいな国ではありませんからね。
どの国にも悪いことを考える人はいますから、そういった人に警戒しつつも、他の数多くの魅力的なネパール人との交流を楽しんで欲しいと願うばかりです。
それでは、ネパール滞在を存分にお楽しみください。